性同一性障害当事者にとってホルモン療法とは

みなさんこんにちは、ライフ部門のあいです。

みなさんはホルモン療法、ないしホルモン治療についてどんな認識をお持ちでしょうか。

『女性ホルモンを摂取すれば胸が大きくなる。肌が綺麗になる。』

『男性ホルモンを摂取すれば筋肉がつきやすくなる。声が低くなる。』

性同一性障害当事者以外の方もこういったイメージはお持ちではないかなと思います。もちろん、本来身体にないものを“薬物”によって摂取するのですから副作用もあります。

そういったことも含めてまず『ホルモン剤は望む身体が手に入る魔法の薬ではない』ことをご理解下さい。

さて、ではそもそも何故ホルモン療法によって身体の女性化、ないし男性化が起こるのでしょうか。

性ホルモンとは身体に第二次性徴を発現させ、男女の差を生殖器以外にも顕著にする物質です。簡単に言えば子供を作ることが出来るような身体を作るわけですね。

思春期頃から主に男性は男性ホルモンが、女性は女性ホルモンの分泌が顕著になります。これによって身体的な男女の差が生じます。

これは性同一性障害にとっては喜ばしくない成長です。これを抑える、あるいは望む第二次性徴を発現させるためにホルモン療法を行うのです。

ホルモン療法は望む身体の為だけではない

さて、前項でホルモン療法は望む第二次性徴を発現させるためによる、と申し上げました。

もちろん、この意味合いは大きいのですがそれだけではありません。

子宮や睾丸を切除した当事者は望む性ホルモンがないばかりか、本来分泌される性ホルモンもない状態になります。つまり、身体には性ホルモンがほとんどない状態になるわけです。

人にとって性ホルモンは身体的な特徴を男性的、女性的にするためだけ野ものではありません。仮に性ホルモンがなくなれば身体には様々な不調が起こります。

よく知られている例で申し上げると“更年期障害”というものがあります。

一般的には閉経後の女性が悩まされるものとされており、自律神経失調症状、精神症状などを引き起こします。ただ、これは男性にも起こりえます。

女性は閉経というわかりやすい節目があるので注目されがちですが、男性も加齢やストレスによってホルモンの分泌が衰えることがあるのです。

つまり、男性ホルモンにせよ女性ホルモンにせよ、このいずれかが体内になければ年齢に関係なく、更年期障害のような症状身舞われることとなります。

また、手術などを行なっていない方でもホルモン療法を長く続けていれば、その身体は治療によって摂取したホルモンでバランスをとっていることになります。自己判断で急に止めてしまえば体調を崩すこともあり得るでしょう。

病気ではない。けれど薬は必需品

さて、これらのことから性同一性障害当事者にとってホルモン療法が自己の審美性のだめなどではない。必要性のあるものであるということはご理解頂けたかと思います。

その上で次のような記事をご紹介致します。

東京・銀座の元ホステスの女が交際相手を殺害したとされる事件。性同一性障害で男性から女性になった元ホステスに対し、収容先の東京拘置所が女性ホルモンの投与を拒んだ。弁護人や医師らは体調悪化を懸念するが、なぜ投与が認められないのか?
■拒む拘置所「病気ではない」
この元ホステスの女(29)は東京地裁で昨年12月にあった裁判員裁判では時に震え、口はほとんど開いたまま。しゃべろうとしても、何度も言葉を詰まらせた。弁護人は体調不良の一因として、「拘置所が、必要なホルモン剤を投与していない」と指摘した。
弁護側によると、女は男性として生まれたが、10代で性同一性障害と診断された。18歳から女性ホルモンの投与を開始。20歳までに性別適合手術を受け、戸籍上も女性になった。昨年2月の逮捕後、警察署はホルモン投与を認めたが、その後に移された東京拘置所は投与を拒んだ。弁護人が投与を求めたが、「病気ではない」と応じなかった。
裁判では、女の精神鑑定をした医師が出廷。弁護側の質問に対し、「卵巣がなく、女性ホルモンが欠乏している状態」と指摘し、「投与が必要。投与をしないと精神的に不安定になる」と懸念を示した。
昨年12月4日の判決は懲役16年(求刑懲役18年)。ホルモン投与の問題は触れられなかったが、弁護側は拘置所のやり方を問題視しており、何らかの対応を検討しているという。

性同一性障害の被告にホルモン投与、なぜ認められない?より引用

たしかに性同一性障害は病気ではありません。しかし、ホルモンを摂取することは生きていくために必要なことです。

ご紹介した例以外でも、一部の当事者以外の方からはホルモンの摂取は軽視されることが往々にしてあります。

また、当事者にしても様々な理由から自己判断でホルモン療法を中止してしまうことがあります。

しかし、ホルモンは望む性に近づくための魔法の薬ではありません。ほしい時に都合よく摂取すれば良いというわけではないことをどうかご理解頂ければと思います。